こんにちは、こども園副園長の「しん」です。
皆さんは、パートで保育士や保育教諭をしていて、こんな悩みを抱えた経験はありませんか。
- 最近、保育士の給料の改善が進んでいるっていうけど、全然変わらない
- 処遇改善加算ってパートもお金もらえるの?
現在、認定こども園で副園長をしている私がお答えします。
実はそれ、保育園やこども園はしっかりと処遇改善加算として補助金を受け取っているのに、実際に自分たちがほとんど貰えていないだけかもしれません。
そこで今回は、保育士の給料を改善するという処遇改善加算とは何かを解説し、なぜ皆さんにはその恩恵が少ないのかを説明します。
もくじ
処遇改善加算は低賃金の保育士・保育教諭の給料アップのためのもの
そもそも、処遇改善加算とは、保育士や保育教諭(以下保育士らと言いますね。)の業務量が給料に見合っておらず、離職率が高いことから、保育士らの給料を上げて離職を防ぐために設けられたものです。
そして、処遇改善加算には、
- 処遇改善等加算Ⅰ
- 処遇改善等加算Ⅱ
という2種類の補助金があります。
処遇改善等加算Ⅰは経験年数ベースの補助金
処遇改善等加算Ⅰは「保育士らの経験年数に応じた給与のベースアップや賃金改善」です。
基礎分、賃金改善要件分(キャリアパス要件分を含む)から構成されており、園の職員の経験年数の平均や賃金が改善しているかどうか、研修等に積極的に参加しているかどうかで補助金の割合が変わってきます。
具体的には、
- 基礎分(経験年数計算)
園の職員一人あたりの平均経験年数により2~12%の範囲で加算率が設定されます。
- 賃金改善要件分(キャリアパス要件分を含む)
賃金改善及び実績報告を提出し、その報告から、基準年度より賃金改善を行っていると認められた場合には追加で補助金が5%~6%の範囲で加算されます。
- キャリアパス要件分
職員の役職や職務内容に応じた勤務条件と賃金体系の設定、職員の資質向上に向けた研修の実施や機会を確保し、職員への周知等を行うことを条件として認められます。この条件を満たさない場合には、賃金改善要件分の加算率が2%減らされます。
つまり、
職員が長く働けて、少しずつでもいいから給料が良くなっていって、保育士らのキャリアを積み上げていけるように研修などに参加させるような、しっかりとした園には相応に補助金を出します!
という制度ですね。保育士らが離職しないような園に対して優遇しようとするものです。
処遇改善等加算Ⅱはキャリアを積んだ職員がいればいるほど交付される補助金
処遇改善等加算Ⅱとは、「キャリアパスと研修体制を構築し、それを通して技能・経験を積んだ保育士に対する追加加算」をいいます。これも補助金です。
簡単にいうと、今まで保育園やこども園は保育士がキャリアを積んで役職を得るという機会がほとんどありませんでした。
通常の会社であれば、
- 平社員
- 主任
- 係長
- 課長
- 部長
- 専務
- 副社長
- 社長
というように、ある程度年功序列であったり、実力によって役職が数年ごとに上がっていき、それに伴って給料も上がっていきます。
一方で保育園の場合は、
- 保育士
- 主任保育士
- 副園長
- 園長
のこれだけというのが多いです。下手をすると副園長という役職すらない場合もあります。
また、こども園でも、
- 保育教諭
- 主幹保育教諭
- 副園長
- 園長
と同様です。
おまけに、保育の業界は家族経営の園が非常に多いという特徴があります。そのため、園の役職のうち、副園長と園長は創業者一家で占められている…なんて場合も。
すると、実質役職は主任保育士や主幹保育教諭だけになってしまいます。
そりゃあ、役職が全然ないので給料がなかなか伸びないのもしょうがないですね。
そこで、処遇改善加算Ⅱでは、新たに役職として、
- 副主任保育士
- 専門リーダー
- 職務分野別リーダー
という役職を新設し、その対象となる役職者の人数に応じて補助金を出すという制度です。ただし、役職者の人数は制限されています。
具体的には、
副主任保育士、専門リーダーのうち加算対象者1人当たり月額4万円の加算があります。
また、職務分野別リーダーのうち加算対象者1人当たり月額5,000円の加算があります。
ここで、役職者のうち加算対象者と限定したのは、加算対象者となるには役職に就くだけではなく、経験年数やキャリアアップ研修を修了しているなどの条件があるからです。
処遇改善加算の対象者にはパートの保育士・保育教諭も含まれる
このうち、処遇改善加算Ⅰの対象者は全職員ですし、処遇改善等加算Ⅱの対象者は園長を除く全職員です。
そのため、パート保育士らであっても処遇改善加算の対象者になります。
パートに処遇改善加算の恩恵が少ないのは園が分配しないから
パート保育士らも処遇改善加算の対象者であれば、相応に給料が増えもいいはずなのになぜ増えないの?と思うかもしれません。
しかし、これにはカラクリがあります。
まず、覚えておくべきなのは、処遇改善加算は補助金の名称です。
補助金なので、交付の対象は職員ではなく、園です。
そのため、国→園→職員の流れでお金が流れることになります。
次に大事なことは、処遇改善加算の一部については、どの職員に手当として交付するかは各園の裁量に任されているという点です。
具体的に説明します。
処遇改善加算Ⅰには、基礎分と賃金改善要件分の加算があったことは既に説明しましたね。
このうち、基礎分については、基本給や手当といった形で適切に昇給することとされています。
一方、賃金改善要件分については、基本給や手当、一時金という形で確実に賃金改善に充てるとされており、同じ法人であれば他の保育・教育施設の職員にも分配できるとされています。
処遇改善加算Ⅱについては、副主任保育士や専門リーダーとして加算の対象者の半分以上は月額4万円の満額を分配しなければならないものの、残りの加算額については、主任保育士や職務分野別リーダー等に対して月額5,000円以上4万円未満で分配することができます。
また、職務分野別リーダーを対象者とする加算については、加算対象者人数以上に対して月額5,000円~副主任保育士等への最低額の間で分配することができます。
以上をかいつまんでいうと
- 処遇改善加算Ⅰの基礎分は職員全員が貰える(2%~12%の範囲)
- 処遇改善加算Ⅰ賃金改善要件分については、誰に分配するかは園が自由に決められる
- 処遇改善加算Ⅱについては、園長や主任保育士以外の役職者は必ず5,000円以上は分配されますが、国から受けた補助金の残額について誰に分配するかは園が自由に決められる
ということになります。
以上を踏まえると、パート保育士らに処遇改善加算の恩恵が少ないのは、園の裁量で分配できる補助金がパート保育士らに分配されていないからです。
パート保育士らが確実に処遇改善加算としてお金を受け取れるのは、処遇改善加算Ⅰの基礎分の2%~12%のみ。あとは園が他の正職員らに分配しています。
職員らの平均経験年数が少ないとほぼ給料が増えない…ということになります。
特に、処遇改善加算Ⅱは役職者になるのは、基本的には正職員のみですから、園があえてパート保育士にも補助金を分配するんだという意志がない限り、パート保育士らがお金を受け取る余地はほとんどなくなってしまいます。
処遇改善加算分を手当として受け取れないなら、受け取れる園へ転職するのもあり
以上のとおり、パート保育士は園の裁量により補助金の分配を受けられるかどうかが決まってしまいます。
元々の時給がそれなりに良く、人間関係も悪くない…というのであれば、処遇改善加算は目をつむって、園の方針が変わるのを待つというのも良いと思います。
ただ、園長の交代など大きな事情がない限り、方針が変わることはあまり考えられませんし、時給もあまり良くない、人間関係も微妙…といった事情があれば、補助金の分配を受けられる園にサクッと転職してしまった方がお金も稼げるしおすすめです。
園にはそれぞれ方針があり、長期間勤務をする正職員を優遇するために正職員に多く補助金を分配する園もあれば、全職員に平等に分配するという園もあります。
パート保育士らに対して補助金の分配をしないという園では、パート保育士ら自体を軽く見ている可能性もあります。やはり、パート保育士らに対してもきちんと分配してくれる園の方が職員の福利厚生をきちんと考えてくれており、人間関係の問題も生じにくいでしょう。
今後も処遇改善加算による保育士の給料の底上げは続いていきますし、今後さらに増える可能性もあります。パート保育士らに分配しない園にいつづけた場合にどの程度損するかを一度計算してみても良いでしょう。
まとめ: パート保育士・保育教諭は十分に処遇改善加算の分配を貰えていない可能性があるので、一度計算してみよう。
今回は、処遇改善加算の説明と、なぜパート保育士がその恩恵を受けられていないかを解説しました。
処遇改善加算によるお金も給料と同じです。日々の生活に直結する部分ですので、自分なら最大でいくらもらえるのか、そのうちどの程度が実際にはもらえていないのかを計算しましょう。
もしかすると、実は他の園ではかなり貰えるのかもしれませんよ。